建物は境界線からどれくらい離さなければいけないのですか?

残念ながら、このご相談内容は土地家屋調査士の業務範囲に入りません。一応ご説明しますが、個人的な見解として受け取って下さい。詳しくは専門家にご相談されるべきです。

民法では、相隣関係として、境界線から50cm以上離しなさいとなっています。これに違反して建築しようとしている場合は、建築を中止させたり、変更させたりできることも定められています。着工から1年以上経ったり、竣工している場合は、中止や変更は要求できませんが、損害賠償は請求できます。

 

ただし、これと違う慣習があるところでは、その慣習が優先します。

たとえば、周辺が商店街で、それぞれの店舗が密集して境界線ぎりぎりに建っているところがあります。そのように建築しても良いということが、そのあたりの暗黙のルールのようになっている地域では、50cm離さなくて良いことになります。

また、相隣関係は、強行規定ではありませんので、隣人との間で、50cm離さなくても良いと決めることができます。

一方、建築基準法では、防火地域や準防火地域で、外壁が耐火構造の建築物は、敷地境界線ぎりぎりに建てられることになっています。このような地域では、50cm離さなくても良いわけです。

 

調和のある良好な市街地を形成するために、都市計画法上の地区計画として、たとえば「建築物の壁から道路境界線までの距離は1m以上とする」というような規制がある地区もあります。この地区内で建築するときは、当然ながら、規制の範囲内で建築する必要があります。

 

どこで建てられるかによって、境界線から離さなければならない距離は変わってきます。

防火地域や準防火地域、地区計画のある地域は、そんなに広く定められているわけでありません。

また、境界線から30cmしか離さなくて建築することを、お隣さんが了解された場合でも、いつかお隣さんはいなくなります。相続や売買でお隣の所有者が変わられた後、新しい所有者からクレームが出てくるかも知れません。承諾書をもらっておいて、ずっと保管しておくのもひとつの方法ですが、壁が境界線から30cmしか離れていなければ、屋根や庇は境界線にもっと近づいているでしょう。知らないうちに、雨水が隣家に流れ込んでいるかも知れません。良好な隣人関係を望まれるなら、一般的には、民法の定める50cm以上は離しておかれるのが良いのではないでしょうか。