隣の家の屋根が越境して困っています。

問題をいくつかのケースに分けて検討する必要があるでしょう。

1. あなたが認識している隣との境界が、隣の人が認識している境界とずれており、隣の人は自分の敷地内だから自分の家の屋根は越境していないと考えている場合。

2. 境界自体に争いはなく、隣の人も越境していることを認めているが、家の屋根は切り取れないと言っている場合。

3. 隣の家の屋根が越境しているのは、随分昔からで、時効により土地の所有権を取得されているかも知れない場合。

4. 隣の人が越境していることを知っていると思われるが、全然話し合いに応じてくれない場合。

 

1.  は土地家屋調査士がご相談にのれます。

2. はご自分の土地に余裕があるのであれば、屋根が越境している部分の土地を分筆して、隣の人に売却することで解決する方法があります。
分筆は土地家屋調査士の仕事ですが、価格をいくらにするかとか折衝方法は宅地建物取引業者(いわゆる不動産仲介業者)の方が詳しいでしょう。

3.  4. は弁護士の先生の業務範囲と思います。

 

 

1. の土地の境界に争いがある場合、いくつかの解決方法があります。

法務局の筆界特定登記官に、筆界特定の申請をする方法

登記簿上、1個の土地として区画されて地番が付された土地を、1筆の土地といいます。法務局にある公図や地積測量図の境界は全て筆界をあらわしています。この筆界は登記されたときに確定しており、隣接地の所有者間で合意したからといって、動くものではありません。移動したい場合は全て、登記の手続きや裁判によって行う必要があります。

世間で一般的に、境界という場合は所有権の境のことを指しています。この境界は所有者間で合意すれば自由に動かすことができます。

筆界と境界(所有権の境)は一致していることが大半です。明治政府が土地の私有を認めて、作成された地積図では筆界と境界は一致していました。
ところが、1筆の土地の一部を売買して、分筆登記をしなかった場合でも取引は有効です。また1筆の土地の一部が時効により他人の所有地になることもあります。このような経緯を経て筆界と境界(所有権の境)が、ずれることになります。

筆界特定とは、1筆の土地とその隣接地の境を、筆界特定登記官に現地で特定してもらうことです。ただ、登記上現れてこない境界(所有権の境)については判断されませんので、注意が必要です。

筆界特定申請には手数料がいりますが、固定資産評価額に比例し比較的安価です。
ただ、筆界を確定するにあたっては、現地を測量する必要があり、その実費に数十万かかります。

この申請は土地所有者が自分で行うことができますが、土地家屋調査士に委任して申請してもらうこともできます。
申請をすると、現地での立会を行い、関係者から意見を聴取し、種々の資料を基に筆界がどこかを特定してくれます。

土地家屋調査士は、土地の分筆登記や地積更正登記を日常業務として行っております。その際に、筆界を調査し特定する作業が必要であるため、筆界を扱う唯一のプロと言えますから、ご相談されてはいかがでしょうか。

 

境界問題相談センターちば に和解の仲介を依頼する方法

千葉県土地家屋調査士会は、裁判外紛争解決のための民間ADRとして、境界問題相談センターちばを設立しています。法務大臣から認証を受けたADR機関で、法律の専門家である弁護士と、境界の専門家である土地家屋調査士が、調停委員として協力して、当事者間の話し合いで解決を図る組織です。

調停は話し合いですから、相手方が話し合いに応じなければ進めることができませんが、境界問題相談センターちばでは、相手方に話し合いに応じるよう説得してくれます。

筆界の位置だけではなく、境界(所有権の境)についても、話し合いがまとまれば和解契約書が作成されます。

この相談先は、千葉県土地家屋調査士会のホームページに載っています。

 

裁判で決着を付ける方法

境界確定訴訟を提起して、裁判所に境界を特定してもらう方法です。日本の法制度の中では、相手方に強制して決着を付けることができる最終的な手段は訴訟です。

最近ではこの裁判の中で、法務局に筆界特定の申請をするように指導されることがあると聞いています。

また、法務局の筆界特定の結果に納得がいかない場合は、裁判で決着を付けることになります。